グライダー
私は、学生時代にグライダーに乗って空を飛ぶクラブに入っていました。グライダーと言っても、ハンググライダーではなく操縦席の付いた操縦桿で機体を操作するものです。今でも外に出ると空を仰ぎ見て雲の状態を見ることがあります。そして、積雲という固まり状で綿のような雲を見ると懐かしい気持ちが私の中に甦ってきます。なぜなら、当時は積雲を探すというのが、習慣になっていたからです。積雲は、日中、暖められた空気が上昇することよって成長します。従って、積雲の下には上昇気流が発生しやすく、エンジンを持たないグライダーにとってはエンジン代わりとなるものなのです。
ちなみに、当時乗っていたグライダーも日本語で「積雲」という意味の名前でした。また、羽ばたかずに空を舞っているトンビもよく探しました。そこにも上昇気流があるからです。離陸してトンビを目にすると、真っ直ぐにその場所へとグライダーを進めたものです。ところで、上空で鳥とぶつかりそうになったことが何度かありましたが、その度に鳥の方から避けてくれました。つくづく、空は鳥のものなのだなと感じたものです。
時々、「エンジンを持たないグライダーは、どうやって空へ上がるの?」と聞かれることがあります。それは、地上からウインチという特殊な機械で約200mの上空まで引っ張り上げてもらうのです。そして、ウインチとの間に張られていたワイヤーを切り離して空へと飛び出して行きます。そうすると、耳に聞こえてくるのは、グライダーが風を切る音だけです。その静寂の世界がしばらく続くうちに、風を切る音が少し高く変わります。上昇気流の中に入ったのです。そういう自然と一体になった感覚を何度も経験しました。
ところで、グライダーは普通ゆっくりと下降するだけですから、空を飛んでいるのは約5分間だけです。しかし、ひとたび上昇気流をつかまえることに成功すると、空の散歩を楽しむことができます。私が、最も高く上がったのは高度2200mで、滞空時間は2時間でした。その時の上空から見た仙台の美しい街並みを、いまだに私は忘れることができません。いつかまた、空に戻ってみたいと思っている今日この頃です。